2021/11/05解決事例
証拠物の還付に関する国賠訴訟における和解成立について
弁護士外山が,原告兼原告代理人として,宮崎県及び国を相手として,訴訟提起をしました損害賠償請求事件について,裁判上の和解が成立しました。
この事案は,外山が国選弁護人として選任された事案において,逮捕時に被疑者が使用していたスマートフォンが警察官によって差し押さえられたところ,刑事訴訟法の手続に反して,第三者に還付されたことが違法であるとして訴訟提起を行ったものです。
裁判所は,訴訟において,警察官による還付手続について不備があるとの心証を示し,本件について和解での解決を行うことがよいのではないかと双方に提案を行いました。
当方としても,十分に和解によることの是非について検討を行った結果,今後,宮崎県が証拠物件の還付にあたり,要件の確認及び適正手続きを履践するとともに,被押収者らの意見聴取を書面化するなど手続の履践を記録上明確にし,疑義のない還付手続に努めることを訴訟上の和解条項として定めることで,将来にわたっての適正手続を確保することができ,和解で終了したとしてもこの裁判が極めて重要な意義を有するものであるとの結論に至り,和解に応じることとしました。
公平な裁判を実施するためには,捜査機関が収集した証拠を弁護側に開示してもらうことが必要条件ではあり,証拠の開示については完全とはいえないまでも少しずつ広がってきています。
しかし,本件のように証拠となるようなものを手続に反し,被疑者,弁護人に秘密裏に第三者に還付等されることになれば,証拠の開示を受ける機会すら与えられないことになり,ひいては公平な裁判を害する結果ともなりかねません。
本件においても,被疑者はスマートフォンには無罪の証拠となるようなやりとりが残っていたと主張していますが,そのような証拠があったのかどうかすら判断できないまま裁判が進められ,判決が言い渡されたのです。そのような判決では到底公平な裁判が実施されたとはいえないのではないでしょうか。
押収したスマホの返還手続きに「不備あった」 国賠訴訟で和解成立、宮崎県が解決金50万円支払いへ – 弁護士ドットコム (bengo4.com)
日向市 本町ひまわり法律事務所 弁護士 外 山 亮